2014/06/22

それから

 函館のコミュニティラジオ局、FMいるかにて僕が選曲を務める番組「カセットテープ・ソングス」が四月から放送日を変更・および放送時間を一時間に拡大して頂くことになりました。毎月第三週の土曜日と日曜日、夕方5時から一時間に渡って放送しております。
 以前までは多くて4・5曲ほどの放送でしたが、番組が一時間に拡大したことで毎回10曲ほどをお届けできるようになりました。この選曲作業がとても楽しい。その月に合わせて、季節や街や、そして顔の見えない誰かを想像しながらその誰かに寄り添うような10曲を一枚のアルバムになるように曲順を考え、ストーリーを構成していきます。
 誰かに聴いてもらいたい、自分の好きな曲を集めて一枚のCDをつくる。みなさんもこんなことを一度はしたことがあるのではないでしょうか。この店のかたちができていったのは、実はこんなことが始まりだったように思います。次はどの曲を聴いてもらおうか、この曲もいい、あの曲は夏にぴったりだ、あれを一曲目にしたら秋を感じてもらえるのではないか、函館の風景にはなぜかこの曲たちが似合う――。
 それをつづけているうちに、ではCD屋をやってみよう、函館でCD屋を始めても売れなさそうだからカフェということにして店内で音楽を聴いてもらおう、と連想ゲームのようにSOUNTRAという妙な店が出来上がっていきました。その連想(妄想)の中にはしっかりと「FMラジオ局で番組をやらせてもらう」という項目もあり、たくさんの縁に恵まれて実現させてもらっているのは本当に嬉しいかぎりです。

原点に立ち戻らせてくれる選曲作業を経て、「カセットテープ・ソングス」はひと月に一度、季節や、街や、あなたに寄り添うような10曲を放送しています。 ひっそりとでも響き、届いていたらいいなあと思っています。函館以外にお住まいの方はこちらから リアルタイムで聴くことができます。





Wild Ones / Paia  from album ''Keep It Safe'' <2013>




SOUNTRA COFFEE AND MUSIC


2013/12/08

音楽があるところ




haruka nakamura / Nowhere  from the album ''Nowhere'' (2012)

2013年もあとわずか。毎年末に僕は音楽とともにこの一年を振り返ります
春や夏にどのような音楽を求め、どのような音楽が秋や冬に寄り添ってくれたか。
この一年は特定の一枚というものはなく、特定のアーティスト、haruka nakamura という方の作品をずっと聴いていました。
好きになったアーティストのことは徹底的に調べるのが常なのですが、このharuka nakamuraというアーティストに関しては、その方の出自やパーソナリティについてもほとんど知りません。調べる気にもさせないほどに、音さえあればほかに何も求めることはなかったんです。
表現者と一聴取者である僕の価値観や感性が重なり触れるところがある。 作品をつくる側と受け取る側のあいだには作品しかない。単純に、それが音楽という表現の良さなのではないでしょうか。なんだかおこがましいかもしれませんが、作品、音楽を通してとても良い関係を築けているような心地良い感覚でいます。

雨の、店内で haruka nakamuraの作品が流れているときにずっと本を読んでいたお客さんの時間が、とても濃密に流れていると感じたことがあります。そしてなにも問わずとも、帰り際にその方は「音楽と本の世界に入りこめた」と返してくれました。
haruka nakamuraの音楽が似合う店にしたい。未だにただひとつ、彼の音楽を聴いているという縁しかありませんが、いつかharuka nakamuraの音楽を当店で多くの方と共有できたら良いなあと日々思っています。 

 
haruka nakamura / harmonie du soir  from the album ''Twilight'' (2010)



SOUNTRA COFFEE AND MUSIC

2012/12/29

暦を読む

1,2,3から11,12、文字を追うと浮かび上がる、僕らが過ごした日々、日々、日々。
ちょうど一年前のことを考えると、ずいぶん遠い昔の出来事のようで、けれど人は「一年なんてあっという間だ」と言う。時間の流れはいつだって説明できないと僕は思うのですが、あなたはどうでしょうか。
そしてあなたの一年は。





Stars / Calender Girl from album "Set Yourself On Fire"



年末年始、当店は変わらず無休で営業しております。変わらないお顔やこのときでしか見ることのできないお顔、みなさんに会えることを楽しみにお待ちしております。

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2012/11/25

日々をめくる 季節をめぐる

春が訪れ、夏は駆け抜け、秋は過ぎ去り、そしてまた冬が来る。2012年初頭に出会ったMemoryhouse / Slideshow Effect というこの作品を、結果として四季のあいだずっと聴きつづけました。
だんだんと暖かくなる期待感を持った春に淡く鳴り、夏の夜に涼しい風を吹かせ、鮮やかな秋の色を記憶に留め、冬の入り口、気づいたらモノトーンに枯れた街に音を響かせる。
変わりのない毎日は日めくりカレンダーのように日々かたちを変え、知らずのうちに季節は巡り、移り変わっていく。この音楽は僕らの時間とともに歩み、そして逆回転、いつかに置いてきてしまった時間をも見せてくれます。

下の動画でこの作品を全曲聴くことができます。お時間がありましたらぜひ、聴いてみてください。




Memoryhouse / Slideshow Effect (2012)



SOUNTRA COFFEE AND MUSIC

2012/11/19

到来 冬来

早くも今年初めての雪が降りました。気づけば周りの山々も雪化粧をすでに終えています。ものごころがついてから大雑把に数えて二・三十回しか知らないこの季節、新しい冬はどんな姿を見せてくれるのか、どんなことを思うのか、どんな音楽がこの冬を忘れさせないでくれるのか、楽しみにしています。

Hammock / Winter Light



SOUNTRA COFFEE AND MUSIC


2011/12/16

手繰り(辿り)寄せる

まずはこちらを


''1901'' by Birdy - from album ''Birdy'' (2011)

つづいてはこちら。


''1901'' by Phoenix - from album ''Wolfgang Amadeus Phoenix''(2009)


後者は僕の大好きなフランスのロックバンド、Phoenix。お間違えのないようにして頂きたいのですが、こちらが原曲で前者がカバー曲です。
前者はイギリスのシンガー・ソングライター、BirdyことJasmine Van den Bogaerdeのデビューアルバムに収録されています。なんと彼女は未だ15歳。ピアノの弾き語りを中心としたスタイルながら、その幽玄な世界に誘い深く引き込まれる歌声は圧倒的なオリジナリティを響かせます。Phoenixの1901は大好きな曲ですが、Birdyの1901を初めて聴いたときは、途中までカバー曲だとは気づきませんでした。単純に、とても良い曲、良いアーティストと思い聴いていました。
この1901という曲を選択するセンス、それをまったく自分の色に染めてしまう創造力と勇気。そして原曲はPhoenixらしい遊び心に溢れた多彩な装飾が施されていますが、Birdyのアレンジを許容してしまえるほどに構成やメロディ、曲の強度に一本の揺るがない筋が通っていたんですね。アーティスト、表現者ってやっぱり凄いなあとあらためて純粋に感動したのでした。


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FMいるか《80,7MHZ》にて毎月第三週の土曜日と日曜日、午後5時より放送中の番組カセットテープ・ソングス当店より店主がお送りしています。
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